【徹底解説】ネットワークスペシャリスト令和5年度 春期 午後Ⅰ問1 Vol.1

令和5年(2023年)午後試験
記事内に広告が含まれています。

本記事では、ネットワークスペシャリスト試験の令和5年度午後Ⅰ問1について、筆者の所感なども交えて解説していきます。
なお、画像や解答例は全てIPA(独立行政法人情報処理機構)から引用しております。

令和5年度春期 ネットワークスペシャリスト(NW)午後Ⅰ
令和5年度春期 ネットワークスペシャリスト(NW)午後Ⅰ 解答例

以下記事にネットワークスペシャリスト試験の概要や、筆者おすすめの勉強方法などもまとめていますので、合わせてお読みください。

ネットワークスペシャリスト(NW)試験とは
本記事では、ネットワークスペシャリスト試験の概要・対象者像などを解説していきます。ネットワークスペシャリスト試験とは独立行政法人「情報処理推進機構」(IPA)が主催する国家試験のひとつレベル4(高度情報処理技術者試験/最高レベル)に分類され...
【ネットワークスペシャリスト】筆者オススメの勉強方法を大公開
はじめまして。たおぴと申します。過去2回受験したネットワークスペシャリスト(NW)試験について、私のオススメする勉強方法を公開します。本記事は以下のセクションで進めていきます。少しでも皆さまのお役に立てれば嬉しいです。本記事で紹介する内容試...

筆者の感想として、本設問は一見すると見易そうに見えたのですが、解いてみると意外と難しかったという印象です。
筆者がネットワークスペシャルを受験したのは令和5年が初めてだったのですが、全体的に午後Ⅰが難しく、玉砕した思い出があります。

なるべく分かり易く解説していきますので、最後までご覧いただけると嬉しいです。

筆者はまだネットワークスペシャリスト試験の勉強中の身であるため、誤った情報をお伝えする可能性がありますので予めご容赦ください。
誤った情報を含んでいる場合はご指摘頂けると助かります。

本設問の概要について

本設問は、データセンター内に構築しているWebサーバをクラウドを活用した構成に更改するものです。
負荷分散やHTTP/1.1、HTTP/2、経路情報について問われた問題でした。

本設問は大まかに以下のような内容で進んでいきます。

本設問のフロー
  • STEP.1
    現行のシステム構成

    G社は一般消費者向け商品を扱う流通業者で、消費者向けにECサイトを運営しています。
    利用者増加に伴い、Webシステム更改を行うことを決定しました。
    DMZとサーバセグメントの、非常にシンプルな構成が紹介されます。

  • STEP.2
    G社Webシステムの構成見直しの方針と実施内容

    現状のオンプレ環境に構築したWebサーバなどの一部を、J社が提供するクラウドサービスに移行していきます。
    J社クラウドサービスについて、HTTP/2やLBを用いた負荷分散について検討を進めていきます。
    現状の構成を残すもの、クラウドに移行するものを明確にしましょう。

  • STEP.3
    HTTP/2の概要と特徴

    HTTP/2の概要や特徴を細かく調査するフェーズです。

  • STEP.4
    HTTP/2における通信開始処理

    HTTP/2の通信方法について、主にシーケンス図を利用して特徴を押さえています。

  • STEP.5
    新Webシステム構成

    最後に、これまで洗い出してきたHTTP/2の特徴を元に、ネットワーク構成を検討決めていきます。
    J社クラウドの仮想LBや仮想ルータとの経路制御を確認し、新しい構成について方針が決定したようです。

また、前提知識としてHTTP/1.1とHTTP/2の比較について簡単に説明します。

HTTP1.1とHTTP/2の比較
項目HTTP/1.1HTTP/2
リクエストの多重化直列処理(1リクエストずつ)並列処理(多重化)
ヘッダー圧縮なしHPACによる圧縮
優先度制御なしストリームごとに優先度設定
セキュリティTLS推奨TLS必須
識別子HTTP/1.1h2

これらを抑えた上で、設問に臨みましょう。

IPAの解答例について

設問解答例予想
配点
設問1aリバース2
b権威2
cキャッシュ2
dストリーム2
e:method2
fTLS2
設問2(1)リクエストを受けたのと同じ順序でレスポンスを返す必要がある。6
(2)通信開始時にTCPの上位のプロトコルを決定するため6
設問3(1)(d)、(e)3
(2)クライアントが利用可能なアプリケーション層のプロトコル6
設問4(1)172.21.10.0/243
172.21.11.23
172.21.11.13
(2)動作
モード
アプリケーションモード2
理由HTTP/2リクエストをHTTP/1.1に変換して負荷分散するから6
※予想配点は左門至峰先生の「ネスペR6」より引用させて頂いております。

筆者は35分程度で解き終わりました。
難しくて解答が思い浮かばなかったため、そこまで時間がかからなかったのかもしれません。

設問1

まずは穴埋め問題です。
知っておかないと解けないため、見慣れない単語があればしっかり覚えていきましょう。

 

(a)

問題文

クライアント(インターネット)からAPサーバまでの経路を現在のG社の構成に記載してみました。
※インターネットの先にクライアントがあります。

動的コンテンツを配信する場合、Webサーバはクライアントからのリクエストを中継します。
インターネットから社内の通信を代理で中継するものは、リバースプロキシと呼ばれます。

IPAの解答例

リバース

反対に、社内からインターネットへの通信を代理で中継するものはフォワードプロキシと呼ばれます。
こちらの方が馴染みがあるのではないかと思います。

(b)、(c)

問題文

次はDNSに関する知識問題です。
まず(b)ですが、「G社サービス公開用ドメイン」と記載されていることから、インターネット上の不特定多数の端末より、G社ドメインの名前解決を受け付けるサーバということが分かります。
このようなDNSサーバを権威DNSサーバと呼称します。

次に(C) についてです。
サーバがインターネットにアクセスするときの名前解決に応答する」と記載されています。
このようなDNSサーバをキャッシュDNSサーバと呼称します。

IPAの解答例

(b)権威
(C)キャッシュ

(d)

問題文

続いて(d)についてです。
HTTP/2において、TCPコネクション内でリクエストとレスポンスを多重化する仕組みについて問われています。
正直、私はこの名称を知りませんでした。

正解はストリームです。これは覚えるしかないですね。
※HTTP/2については後々の問題で詳しく解説します。

IPAの解答例

ストリーム

(e)

問題文

続いてはHTTP/2の代表的なヘッダーフィールドについて問われています。
正解は「:method」です。
この問題も私は分かりませんでした。

IPAの解答例

:method

HTTP/2のヘッダーフィールドについて簡単に解説します。

HTTP/2のヘッダーフィールドについて
  • HPAC(ヘッダー圧縮)という仕組みを使用している。
  • ヘッダー圧縮を行うことで、通信量の削減や応答速度の向上が実現されている。
  • ヘッダーフィールドの種類は以下の通り。
ヘッダー名説明必須
:authorityホスト名example.com
:schemeプロトコルhttp、https
:methodHTTPメソッドGET、POST
:pathリクエストのパス/index.html
:statusHTTPレスポンスコード200、404

(f)

問題文

HTTP/2とHTTP/1.1は互換性保たれるよう設計されていますが、両者で同じURIスキームが利用されます。
両者の互換性を保つため、ALPNを利用しています。

TLSプロトコルを拡張したものたALPNとなります。

IPAの解答例

TLS

これは非常に難しかったと思います。
一応、設問中の図3を見るとヒントが隠されています。

HTTP/2の通信開始前に、TLSセッション開始処理があります。
(d)ClientHelloと(e)ServerHelloの中でALPNを用い、HTTP/2を使うのか、HTTP1.1を使うのかを決定します。

本設問の講評について

設問1については、(d)(e)(f)が非常に難しかった印象です。
IPAの採点講評にも「設問1では,d,e,fの正答率が低かった」と書かれています。
HTTP/2プロトコルは広く普及してきているので、用語や仕組みをしっかり理解していきたいですね。

設問2

(1)

問題文

まずは下線①について見ていきましょう。

(d)には「ストリーム」が入ります。

通信を多重化する方式のHTTPパイプラインについて、HTTP/1.1に存在する制約について答える問です。
これはあまり深く悩まなくていい問題です。

下線①の通り、複数のリクエストがあった場合、HTTP/1.1だとレスポンスの順序に制約があるのです。
冒頭でも述べた通り、HTTP/1.1はリクエストがあった順番通りにレスポンスを返す必要があります。
よって正解は以下の通りとなります。

IPAの解答例

リクエストを受けたのと同じ順序でレスポンスを返す必要がある。(30字)

HTTP/2はその制約がないため、通信の高速化を実現できるわけですね。

(2)

問題文

下線②の部分を見てみましょう。

(f)は「TLS」が入ります。

HTTP/2とHTTP/1.1は同じ”https://”が使用されるため、一見すると区別がつきませんが、それを区別する仕組みがALPNです。
具体的には、ヘッダーフィールドに存在する識別子(HTTP/2であれば”h2″)より、HTTP/2またはHTTP/1.1かどうかを判断するのです。

また、少し後にネゴシエーションについての記載があります。
この時にHTTP/2またはHTTP/1.1どちらを利用するか決定するのです。

よって、正解は以下の通りです。

IPAの解答例

通信開始時にTCPの上位のプロトコルを決定するため(26字)

この正解を見てもピンとこない方もいらっしゃったのではないでしょうか。
私もその一人です。
このような解答となる理由は、ALPNはHTTPに特化したものではなく、他のTCPプロトコル(FTPやIMAPなど)にも利用できます。
よってこのような解答となるのです。

ちなみに、私は以下のように解答しました。

筆者の解答

HTTP/2とHTTP/1.1の判別をする必要があるため

まとめ(Vol.2)に続く

いかがだったでしょうか?
本設問は、現在のオンプレ環境をクラウドに移行していくという内容でした。

クラウド移行にあたり具体的な技術について調査を行いました。
設問3以降は、いよいよクラウド環境に移行していくフェーズです。

次回記事でも続きを頑張って解説していきますのでご覧いただけると嬉しいです。

コメント

たおぴについて

勉強を頑張るサラリーマン
たおぴ

30代前半のしがないサラリーマン。IT系の企業にて働いているが、給与面に不満があり転職を決意。
資格勉強なども行っており、皆さまのお役に立てる記事を書いていきたいと思います。

【保有資格】
・情報セキュリティマネジメント
・応用情報技術者
 他いくつか

【取りたい資格】
・ネットワークスペシャリスト(既に2回不合格...)
・プロジェクトマネジメント
・ITストラテジスト(最終目標!)

【趣味】
・洗車

たおぴをフォローする